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(仮)。

脳みその中のうずまきを整えたい。

あの人の背中でかの人を思う。

あの人の二輪の後ろに乗っていながら、かの人の原チャリ姿を思い出すなど。

突然降ってくるのか湧いてくるのかの記憶の中の散らばりを拾い集めてみたところ、かの人とのやりとり、笑顔、些細な傷つけあい。

冬の二輪はとても寒くて、剥きだしの自分を心細く思う。

しっかりとした防寒なんて、してなかったあの頃の、

若い若い若い私とかの人。

ほっぺたの紅さとか垂れた鼻水とか、それでも震えないたくましい手足とか。

夜に、雪降る寒空の中、無鉄砲に原チャリで会いに来てくれたこと。

その労力のすごさを知ろうともしなかった私の残酷。

こっそりと招き入れるドキドキ。世界中でたった二人だけになった数々。

何時間も待ったこと。身体に合ってないダッフルコート。少し湿った髪の毛。

ずっと一緒にいたいのに、一緒にいると苦しくなる複雑。似合わない化粧を似合わないと言ってくれたこと。でも酷く傷ついたこと。押し付けるようなキス。息を潜めて夜。

熱量が今よりうんと高かったことを思い出し、胸の辺りがさわさわする。

好きだとちゃんと言ったり言われたりしないへたくそな駆け引き。

握った手はとても冷たく心許なかったけれど、それが全てだと信じていたから生きた。

小さな行き違いが、大きな生き違いとなったことに気づいて、

私たちは終わったのだった。

悴んだふくらはぎを感じながらあの人の後ろでそれを思い出して、

たまらなくなり背中をぎゅっとする。

あの人と今を生きる私が、どこにも行ってしまわないように。